日銀は円高の経済・物価への影響を注視 / 追加利上げへの慎重姿勢が強まる可能性も

日本銀行は、10月1日(火)に短観(9月調査)を公表します。
国内経済では自動車メーカーの認証不正問題の影響緩和(コラム「自動車メーカー認証不正問題の経済への影響」、2024年6月4日)や実質賃金上昇などのプラス要因が見られますが、一方で円高や海外景気減速などの外部環境はマイナス要因になる可能性が考えられます。
他方、インバウンド需要は引き続き好調ですが、増加ペースは落ちてきています。

 

最大の注目点は円高の物価への影響

今回の企業の物価見通し(1年後、3年後、5年後)にはまだ目立った影響は出ないかもしれないですが、販売価格、仕入れ価格ともに顕著に下振れる可能性があるのではないかといわれています。
その場合、企業の物価上昇見通しにもいずれ下振れ要因となるとみられています。
日本銀行が9月25日に発表した消費者物価統計に基づく基調的な3つのインフレ率の指標では、加重中央値、最頻値ともに大きく下振れしました。
円高による輸入物価低下の影響が今後加わってくれば、基調的なインフレ率はさらに下振れ、消費者物価上昇率が持続的に2%程度で安定する、2%の物価目標達成は遠のいていくと思われます。

 

日銀は円高の影響と米国経済の動向を注視し追加利上げに慎重な姿勢

日本銀行の植田総裁は9月20日の金融政策決定会合後の記者会見で、足もとで進む円高によって、「7月に指摘していた物価見通しの上振れリスクは相応に低下した」とし、さらに「政策判断にあたり、様々なことを確認していく時間的な余裕はある」と説明しました。
加えて、米国経済の減速リスクを警戒する姿勢を見せています。

これらは、追加利上げを急がないという明確なメッセージだと考えられています。
9月24日の講演会でも、植田総裁は同様の主旨の発言を繰り返しており、20日の発言が記者会見の質疑応答の中で突発的に出てきたものでなく、日本銀行は、市場の早期追加利上げ観測を抑えるべく、意図して発信したものであることを裏づけました。
こうした点を踏まえると、年内の追加利上げの可能性は低下したと言えるのではないでしょうか。

米国経済が顕著に減速する、あるいは円高が急速に進み、物価見通しの下振れリスクが一層高まる場合には、追加利上げの時期はさらに先送りされるのではないでしょうか。

 

引用:NRI(Nomura Research Institute)
引用元:https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/0926_3

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ミスター 島岡