【後編】 今さら聞けない!半導体株についての動向を解説
前編は、AI関連が火付け役となって半導体に注目他集まった世界的な流れについておさらいしました。
後編は、日本国内の半導体産業についてみていきましょう。
¶ 日本国内の半導体産業の動向は?
経済産業省が2021年3月に公表した資料「半導体・デジタル産業戦略の方向性」によると、日本の半導体は国際競争力が非常に高く、1988年には世界シェアの50.3%を占めて世界1位の座を米国から奪う勢いをみせていました。これが「日の丸半導体」といわれる所以です。しかし、日本の半導体産業は1990年代以降、徐々にその地位が低下し、2019年の世界シェアは10.0%まで落ち込みました。日の丸半導体が衰退した原因は何なのでしょうか。
その一因として、1986年に日米間で締結された日米半導体協定による貿易規制の影響が挙げられています。日米半導体協定は、日本製半導体製品のダンピング(不当廉売)輸出防止や日本市場における外国製半導体製品のシェアの引き上げ義務付けといった非常に不平等な内容でした。米国の競争力回復に加え、半導体産業の育成を掲げた韓国や台湾の猛追を許し、日本はシェアを徐々に奪われることになります。
また、日本の半導体事業は当時、総合電機メーカーの一部門に過ぎず、適切な投資判断や経営判断をできなかったという構造的な問題も指摘されています。
こうした状況を受け、経済産業省は2021年に「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を発足。欧米など資本主義政策を採用する国においても半導体・デジタル産業に関する次元の異なる国家支援が打ち出されている点、半導体が経済安全保障の観点からも重要な国際戦略物資と位置付けられている点などを指摘し、それにならって日本でも国を挙げて国内半導体産業の基盤強化に動き出したのです。
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会の2024年4月の資料によると、日本政府はこの3年間で半導体支援に約3.9兆円の予算を確保しました。マイコンやアナログなど従来型の半導体支援に約9900億円、ロジック、メモリーなどの先端半導体支援に約1.7兆円、次世代ロジックなど次世代半導体支援に約1.2兆円を充てる計画です。
¶ 国内で相次ぐ半導体工場の新設ラッシュ
約3.9兆円の半導体支援では、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)向けに約1.2兆円、国内で次世代半導体の製造を目指すラピダス向けに約9200億円の補助金を充てることが示されています。日本政府の手厚い補助金支給を受けて、国内各地で新工場の建設や増設計画が進んでいます。
日本政府は国内における半導体の安定確保や国内半導体産業の活性化などを目的にTSMCの誘致に乗り出し、日本政府から約1.2兆円の支援を受けるTSMCは熊本県に新工場(第1、第2の各工場)設立を表明しました。総投資額は政府支援の約1.2兆円を含む官民合わせて3兆円規模の巨大プロジェクトになっています。
日本政府から1兆円近い支援を受けるラピダスは北海道への進出を表明し、北海道千歳市に最先端半導体の工場建設を進めています。建設プロジェクトの総投資額は5兆円にも及ぶとされています。
海外半導体企業の工場を誘致して最先端半導体を安定確保できるようにするとともに、次世代半導体技術の国内での確立などにより、日の丸半導体の復活を目指します。日本の半導体シェアは近年低下しているとはいえ、半導体製造装置や半導体材料メーカーで世界有数のシェアを持つ企業は少なくありません。
政府支援による巨大プロジェクトは今後数年にわたって続くため、世界的な競争力を有する日本の半導体関連企業には中長期的に業績面で恩恵を受ける可能性が高いといえるでしょう。そのため、株式市場における半導体関連企業への注目度は折に触れて高まることが予想されます。
¶ 今からでも間に合う!? 半導体関連テーマや関連銘柄を紹介
¶ 半導体は息の長いテーマになる?
先に紹介した企業を含め半導体関連企業の多くは2024年に入ってから大きく値上がりし、世界の株高をけん引してきたため、高値警戒感から利益確定売りが出やすい面がある点は注意してください。高値掴みを避けて、株価水準が落ち着くのを待つのもいいでしょう。ただし、日の丸半導体の復活に向けて日本政府は国を挙げての支援に取り組んでおり、今後も半導体は中長期的に息の長いテーマになることは間違いないと考えられます。
半導体関連テーマとその関連銘柄をいくつか紹介しましたが、このほかにも半導体関連事業に注力する企業や半導体関連で独自の技術・強みを発揮する企業はまだまだ数多く存在しています。自分なりに半導体に関する知識を深めるとともに、将来的に業績拡大が期待できそうな半導体関連企業を発掘し、投資先候補として検討してみるのはいかがでしょうか。
その他にも多くの半導体関連企業があります。
さらに詳しく知りたい方は引用記事をご覧ください。
引用元:https://moneyworld.jp/news/05_00127545_news
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